ジャズ初めの一歩
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ジャズの名曲(11) −真夜中のジャズ−
9月も半ばを過ぎ、すっかり涼しくなりました。

いよいよ、ジャズを聴くにはもってこいの季節の到来ですね。

さて、先に「朝のジャズ」という標題で、朝にちなんだジャズの名曲をご紹介しましたが、今回はそのシリーズの第2弾として、夜、それも真夜中に聴くに相応しいジャズをテーマとしてみたいと思います。

題して、「真夜中のジャズ」です。
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「真夜中のジャズ」という言葉で真っ先に頭に浮ぶ曲といったら、恐らくこれではないでしょうか。

そう、「ラウンド・ミッドナイト('Round Midnight)」です。

作曲者は鬼才セロニアス・モンク(Thelonious Monk, p)。

彼の数多い作品の中でも特に有名な曲の一つですが、作曲者としてC.ウィリアムスという名前もクレジットされています。

これは、「ラウンド・ミッドナイト」を初めて録音したのがウィリアムスであったため、その名前が何らかの間違いで入り込んでしまったのだと言われています。

また、曲名についても少し謂れがあり、元々は「'Round About Midnight」というタイトルだったのですが、後にB.ハニゲンが詞をつけた際、"About"という単語をうまく歌詞にはめ込むことができず、削除してしまったのです。

ちなみに、その歌詞は次のようにうたいます。

It begins to tell 'round midnight, 'round midnight;
I do pretty well 'til after sundown
Supper time, I'm feelin' sad,
But it really gets bad 'round midnight.

モンク自身によるソロやM.デイビスによる名演など、数多くの録音がありますが、今日はジェリー・マリガン(Gerry Mulligan, bs)がモンクと組んで録音した「ラウンド・ミッドナイト」をご紹介しましょう。

なお、1986年に公開された同名のアメリカ映画がありますが、こちらは「悲運の天才ピアニスト」バド・パウエルの生涯をモデルとしたもので、テナーサックス・プレイヤーのデクスター・ゴードンが主演を張ったことでも話題となった作品です。

続いての「真夜中のジャズ」は、「煙が目にしみる(Smoke Gets In Your Eyes)」。

1933年のミュージカル『ロバータ(Roberta)』の主題歌として、作曲ジェローム・カーン、作詞オットー・ハーバックのコンビにより生み出された曲です。

ジャズというより、プラターズによるオールディーズ・ナンバーとして有名かもしれませんが、ジャズのスタンダードとして魅力的な演奏も数多く残されています。

演奏によって表情が大きく変わる曲であるため、中には真夜中にそぐわない録音もありますが、キース・ジャレット(Keith Jarrett)のピアノ・トリオによる「煙が目にしみる」などは、周りが寝静まった時間、静かに聴くに相応しいものだと思います。

さて、最後にご紹介する「真夜中のジャズ」は、これも有名なスタンダード・ナンバー「身も心も(Body and Soul)」です。

もともとは1930年、レヴューのためにジョン・グリーンが作曲し、エドワード・ハイマン、ロバート・サワー、フランク・イートンの3人が詞を書た曲ですが、発表当時はさして注目されませんでした。

しかし、'30年代半ばからスウィングのアレンジで演奏されて次第に知名度が上がり、『The Man I Love』('46年),『Body And Soul』('47年)という2つの映画の中で使われたことにより、ジャズのスタンダード・ナンバーとして完全に定着しました。

あなたのせいで私の人生は滅茶苦茶
だけど喜んで私の身も心も捧げます

ちょっと西洋人にはめずらしい感情のようにも思いますが、グリーンの曲はこの情感を余すところなく伝えているのではないでしょうか。

では、哀愁を漂わせるズート・シムズ(Zoot Sims)のテナーで「身も心も」をお聴きください。


この「身も心も」、および前の「煙が目にしみる」、どちらもけだし名訳ですね。


※上の各曲はそれぞれ次のCDに収録されています。

G.マリガン&T.モンク『マリガン・ミーツ・モンク』G.マリガン&T.モンク 『マリガン・ミーツ・モンク』

K.ジャレット『トリビュート』K.ジャレット 『トリビュート(Tribute)』

Z.シムズ『フォー・レディ・デイ』Z.シムズ 『フォー・レディ・デイ(For Lady Day)』
ジャズの名曲(10) −朝のジャズ−
朝とジャズ−

あまりシックリくる取り合わせとはいえないかもしれません。

やはり、ジャズといえば「夜」というイメージが強いのではないのでしょうか?

これらは否定しないとしても、例えば「秋のさわやかな朝」に聴きたくなるようなジャズの「演奏」があることも確かです。

でも、朝のさわやかさをテーマとした「曲」となると、なかなか見当たりません。

同じ朝でも、寝起きの気だるい雰囲気、まったりと流れる時間などを感じさせる作品が多いですね。

今回はこのような「気だるい朝のジャズ」をご紹介します。

これから夏にかけて聴くには悪くないと思いますので。

まず、「朝」といって真っ先に挙げなければならない曲は、「朝日のようにさわやかに(Softly, As in a Morning Sunshine)」でしょう。

作詞O.ハマースタインII世、作曲がS.ロンバーグの手になるこの曲は、1928年のミュージカル『ニュー・ムーン』で使われました。

この曲を初めて聴いたとき、その曲調とタイトルとの間に大きなギャップを感じたものですが、後で詞の内容を知ってその違和感は解消しました。

ちなみに、詞の意味はつぎのとおりです(青木 啓 著『アメリカン・ポピュラー』 誠文堂新光社,1979 より)。

朝日のようにさわやかに 恋の光が新しく生れる日に忍び込む
恋の炎は朝日に燃え 熱い口づけは裏切られる愛を誓う
情熱は愛をときめかせ きみを天国へ昇らせるが
また愛を殺し きみを地獄へ落とすこともする

次にご紹介するのは、「イン・ザ・ウィー・スモール・アワーズ・オブ・ザ・モーニング(In the Wee Small Hours of the Morning)」。

英語だと長いタイトルですが、日本語に訳すと「早朝のひと時」といった意味ですね。

D.マンがフランク・シナトラのために書いた曲で、シナトラの同名のアルバムとともに大ヒットしました。

個人的には、早朝というよりも遅い時間に起きた休日のような雰囲気を感じます。

さて、最後の曲は「カーニバルの朝(Morning of the Carnival)」です。

1959年公開の仏・伊・ブラジル合作映画『黒いオルフェ』の主題曲で、そのためこの映画のタイトルで呼ばれることもあります。

作曲者はL.ボンファ。

映画のサントラを担当していたアントニオ・カルロス・ジョビンが多忙で手が回らなくなり、ボンファが代役として作ったという曰くつきの作品です。

この曲をはじめとする『黒いオルフェ』の音楽が、来るべきボサノヴァ・ブームの種火になったことは間違いないでしょう。

なお、今回お届けした各曲の演奏は、それぞれウィントン・ケリー・トリオ(Wynton Kelly Trio)、アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズ(Art Blakey & the Jazz Messengers)、およびディジー・ガレスピー(Dizzy Gillespie)、収録CDは次のとおりです。

ウィントン・ケリー『ケリー・ブルー』ウィントン・ケリー 『ケリー・ブルー(Kelly Blue)』

アート・ブレイキー『キャラヴァン』アート・ブレイキー 『キャラヴァン(Caravan)』

ディジー・ガレスピー『ディジー・フォー・プレジデント』ディジー・ガレスピー 『ディジー・フォー・プレジデント(Dizzy for President)』
ジャズの名曲(9) −雨のジャズ−
今年の5月はなんだか雨が多いなあ−
そういえば、去年の秋に「晴れのジャズ」を書いてから随分経ったなあ−

なんてことを、昨日、ぱらぱらと降る雨を見ながら思ったものですから、今回のテーマは「雨のジャズ」に決めました。

ところが、一夜明けてみると、まるで真夏のような日差し。

一瞬、テーマを変えようかとも考えたのですが、「まあいっか」、と開き直って書き始めました。

するとどうでしょう、空が一転俄かにかき曇り、まるでバケツの底が抜けたような土砂降りに…

というわけで(?)、早速本題に入りたいと思います−「雨のジャズ」です。

まず一曲目。

雨といえばこの曲を思い浮かべる方も多いはず、そう「雨に歌えば(Singin' in the Rain)」。

1952年、ジーン・ケリーの監督・主演で公開された同名の映画の主題歌として、また、ケリーが雨の中で踊りながら歌うシーンによって一躍有名になりました。

原曲が作られたのは映画よりずっと古く1929年、作詞はアーサー・フリード、作曲はナシオ・ハーブ・ブラウンです。

ポップスのスタンダードナンバーとしての色合いが強い曲かもしれませんが、ここではジャズのフィーリングを味わえるデイブ・ブルーベック(Dave Brubeck, p)の演奏をご紹介します。

続いては、そのものずばり「レイン(Rain)」。

こちらもレッド・ガーランド(Red Garland)のピアノトリオでお聴きください。

この演奏も、決して雨を厭ってはいない明るく軽快な雰囲気が特徴です。

ところで、この曲をご紹介するにあたり、その出自を調べてみたのですが、作曲がFord-Morgan-Swanstormということ以外、情報がありませんでした。

ともあれ、なかなか魅力的な曲(演奏)であることは確かですね。

さて、最後にお届けするのは、1953年に封切りされたミュージカル『Carnival In Flanders』の主題歌として、ジョニー・バークが作詩、ジェームス・ヴァン・ヒューゼンが作曲をした「ヒアズ・ザット・レイニー・デイ(Here's that Rainy Day)」。

フランク・シナトラの大ヒットをはじめ、ペギー・ リー、ヘレン・メリルなどの歌声が有名ですが、今日はビル・エヴァンス(Bill Evans)のピアノ・ソロでしっとりとした情緒に浸っていただきたいと思います。

なお、この演奏は「晴れのジャズ」でご紹介した"On a Clear Day"と同じアルバムに収められています(以下参照)。

以上、今回はピアノの音色でまとめてみました。

またお会いしましょう。

※上の各曲はそれぞれ次のCDに収録されています。

デイブ・ブルーベック『24 Classic Original Recordings』デイブ・ブルーベック 『24 Classic Original Recordings』

レッド・ガーランド『オール・カインズ・オブ・ウェザー』レッド・ガーランド 『オール・カインズ・オブ・ウェザー(All Kinds of Weather)』

ビル・エヴァンス『アローン』ビル・エヴァンス 『アローン(Alone)』