ジャズ初めの一歩
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ジャズの歴史(7) −新主流派・フュージョンから現在まで−
「コードの呪縛」というバップが抱える課題への解として現れたモードジャズは、'60年代に入ると、モード固有のスタイルの追求やフリージャズの要素の吸収といった進化を遂げます。

それを推し進めた中心は、モードの体現者マイルス・デイビス、および彼の「スクール」の卒業生達であり、彼らは「新主流派」として、その名の通り'60年代ジャズシーンの新しい主流として大きな影響力を示したのです。

M.デイビスがW.ショーター(ts)、H.ハンコック(p)、R.カーター(b)、T.ウィリアムス(ds)と組んだ第2次「黄金のクインテット」の作品からは、新主流派のエッセンスを十分に汲み取ることができます。

新主流派の活躍の後、'60年代の終わりに、ジャズシーンに激震が奔りました。

そう、フュージョンの登場です。

フュージョン(fusion)とは、「融合」「統合」といった意味であり、文字通りロックやポップスを初めとするさまざまな音楽とジャズとの融合が行われ始めたのです。

それまでのジャズは、基本的にアコースティック楽器だけを使用して演奏が行われていましたが、ロック・ポップスを通じて一般的となったエレキギター・ベースやキーボード、さらに後にはシンセサイザーなどが「ジャズ」に取り入れられました。

さらに、リズムについても、ジャズの伝統的な4ビートに対するこだわりが払拭され、多様なリズムが導入されることになったのです。

フュージョンの誕生を高らかに告げた作品は、'69年のアルバム『ビッチーズ・ブリュー』、これを送り出したアーティストは、またもやM.デイビスでした。

フュージョンの登場により、ジャズの多様性は無限の広がりを持つようになりました。

しかし、逆にジャズを他の音楽ジャンルと区別する特性は希薄となり、フュージョンをジャズの範疇に入れることに躊躇する向きもないわけではありません。

ただ、フュージョンがジャズの流れの中から誕生したこと、および'70年代以降の音楽シーンの中で確固とした地位を確立して現在に至っていることは事実であり、ジャズの歴史を語る上では欠くことのできない存在です。

さて、駆け足でジャズの歴史を見てまいりましたが、最後にフュージョンに引き続くジャズのモードについて簡単にご紹介して、このシリーズを終わりたいと思います。

1970年代はウェザー・リポート(Weather Report)、リターン・トゥ・フォーエヴァー(Return To Forever)といったグループがフュージョンを牽引し、既存のジャズファンだけではなく、ロックなど他のポピュラー音楽のファンをも取り込んで大きな広がりを見せた時代です。

その一方、伝統的なジャズはフュージョンの陰に隠れ、ほとんど目立たない存在となっていましたが、もちろん死んでしまった訳ではありません。

やがて'80年代に入ると、ジャズの本道ともいえる4ビートジャズに立ち返ろうという新伝承派と呼ばれるムーブメントが沸き起こります。

その後現れたコンテンポラリージャズも、新伝承派とは一線を画すものの、やはり復古的な性格を持ったジャズといってよいでしょう。

この中からは、より耳当たりのよいスムーズジャズなども派生しました。

そして、'90年代以降は、海を渡ったロンドンを中心に、ヒップホップにジャズの音源を取り入れた踊るためのジャズが、クラブジャズとして愛好されるといった様相などをみせながら、現在に到っています。
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これからもジャズはいくつもの変容を遂げていくと思います。

しかし、それと同時に、過去の大いなる遺産も決して忘れられることはないでしょう。


マイルス・デイビス 「エイティ・ワン(Eighty-One)」
マイルス・デイビス『E.S.P.』CDの画像『E.S.P.』

ウェザー・リポート 「セブンス・アロー(Seventh Arrow)」
ウェザー・リポート『ウェザー・リポート』CDの画像『ウェザー・リポート(Weather Report)』

ウィントン・マルサリス 「フォギィ・デイ(Foggy Day)」
ウィントン・マルサリス『スタンダード・タイムVol.1』CDの画像『スタンダード・タイムVol.1(Standard Time, Vol.1)』
ジャズの歴史(6) −モードとフリー−
1950年代にジャズ・シーンを席巻したクール、ウェストコースト、ファンキー・・・。

これらはどれも「バップ」の流れに沿ったスタイルですが、モダンジャズがその黄金期を迎えようとするこの時代に、バップが抱える問題を認識してその解決を試みる動きが現れました。

フリージャズとモードジャズです。

その誕生から常にジャズ・シーンの主流として君臨してきたバップ、その基本コンセプトは「譜面に書かれているコード(和音)を演奏する」というもので、ジャズの重要な要素である「アドリブ」もあくまでコードをベースとして奏されます。

しかし、ジャズの進化に伴い、よりエキサイティングで高度な演奏が求められた結果、譜面がコードで埋め尽くされるという事態に陥りました。

こうなると、プレイヤーはそのコードを演奏するだけで精一杯で、自分のインスピレーションや感情を表現する余裕がなくなってしまったのです。

いわゆる「コードの呪縛」、これがバップの問題です。

では、その解決に立ち上がった流派の一つ、「モード・ジャズ」からご紹介しましょう。

モード・ジャズは、それまでのコードに従ったアドリブではなく、各コードの間に設定したスケール(音階)の構成音を使ったアドリブを行います。

プレイヤーはコードの呪縛から開放され、自由度は高まりましたが、その一方、演奏に際しては音楽的な創造力がより求められるようになったのです。

モード・ジャズの手法は、50年代の中頃、ジョージ・ラッセル(George Russell)により発案されましたが、それを推進してジャズ・シーンに定着させたのはやはりこの人、マイルス・デイビスです。

マイルスは'58年のアルバム『マイルストーンズ(Milestones)』で実験を行い、翌年にはモードを表現するのにこの上ないピアニスト、ビル・エバンスの協力を得て、モードジャズの完成形とも評される『カインド・オブ・ブルー(Kind Of Blue)』を発表したのです。

さて、続いてはコードの呪縛からの開放を試みたもう一つの流派、ニュー・ジャズ(フリー・ジャズ)について。

フリージャズのスタンスは、モードより一層過激なものでした。

モードジャズは、コード(和音)そのものを否定するものではありません。

それに対して、フリージャズではその名称の通り「何ものにもとらわれない演奏」が基本コンセプトとなっています。

単にコードだけではなく、リズムやハーモニーといった既成の音楽の枠組みを一気に打破することで、自由な創造空間を実現しようとしたムーブメントなのです。

フリージャズは'50年代の中頃に産声を上げました。

それに大きな役割を果たしたのが、セシル・テイラー(Cecil Taylor, p)とオーネット・コールマン(Ornette Coleman, as,tp,vn)。

フリージャズの誕生はモードジャズより早かったのですが、それまでの伝統を一切否定する革新性から、当時はなかなか受け入れられず、フリージャズが市民権を得るのは'60年代の到来を待たなければなりませんでした。

そのきっかけとなったのは、J.コルトレーン、O.コールマンそしてC.テイラーが'64年にニューヨークのCellar Cafeで行った、その名も「October Revolution」という一連のコンサートといわれています。

モードジャズとフリージャズ、あまり馴染みのないスタイルかも知れませんが、この機会にぜひ聴いてみてください。

マイルス・デイビス 「フレディ・フリーローダー(Freddie Freeloader)」
マイルス・デイビス『カインド・オブ・ブルー』CDの画像『カインド・オブ・ブルー(Kind of Blue)』

ジョージ・ラッセル 「リディオット(Lydiot)」
ジョージ・ラッセル『エズセティクス』CDの画像『エズセティクス(Ezz-Thetics)』

オーネット・コールマン 「ロンリー・ウーマン(Lonely Woman)」
オーネット・コールマン『ジャズ来るべきもの』CDの画像『ジャズ来るべきもの(Shape of Jazz to Come)』
ジャズの歴史(5) −モダンジャズの黄金時代−
モダン・ジャズとは、スウィングやバップのように特定のスタイルを指しているわけではなく、スウィングに続いて1940年代はじめに登場したビバップから、60年代終わり頃までのジャズを総称した呼び名です。

つまり、これまでにご紹介したビバップ、クール、ウェストコースト、ハードバップなどはすべてモダンジャズであり、さらにこれらに続くモードジャズ、フリージャズなどもその範疇に入ります。

このように、長い期間のさまざまなスタイルがモダンジャズを形成しているわけですが、このモダンジャズが最大の輝きを示したのは50年代の後半から60年代初めにかけてです。

この時期には、ハードバップの流れを汲むアーティストとして、ホレス・シルバー(Horace Silver, p)、キャノンボール・アダレイ(as)、ボビー・ティモンズ(p)、ドナルド・バード(Donald Byrd, tp)、ルー・ドナルドソン(Lou Donaldson, as)などが一世を風靡したほか、ジョン・コルトレーン、ソニー・ロリンズ、ハンク・モブレーといったテナー・プレイヤーも脂の乗り切った演奏で多くの聴衆を魅了しました。

また、帝王マイルス・デイビスは黄金のクインテットを結成し、有名なマラソン・セッションで吹き込まれたプレスティッジ4部作をはじめとする数々の名盤を残しています。

さらに、クラシック音楽の要素を取り入れ、それまでのジャズのイメージを一新するような作品でジャズ・シーンに旋風を巻き起こしたモダンジャズ・カルテット(MJQ)からビル・エヴァンスの絢爛たる演奏まで、まさに枚挙に暇がないほどのアーティストがこの時代に活躍したのです。

まさにモダンジャズの黄金時代、というよりもジャズの黄金時代といってよいでしょう。

さて、いつものように曲とアルバムのご紹介です。

今回は特に、何をご紹介するか考え始めるといつも以上に悩んでしまいますので、「これまでにご紹介していないアーティスト」でいくことにします。

ではどうぞ。

ホレス・シルバー 「クール・アイズ(Cool Eyes)」
ホレス・シルバー『シックス・ピーシーズ・オブ・シルバー』CDの画像『シックス・ピーシーズ・オブ・シルバー(Six Pieces of Silver)』

ドナルド・バード 「フュエゴ(Fuego)」
ドナルド・バード『フュエゴ』CDの画像『フュエゴ(Fuego)』

ルー・ドナルドソン 「ムーブ(Move)」
ルー・ドナルドソン『ブルース・ウォーク』CDの画像『ブルース・ウォーク(Blues Walk)』

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