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クール、ハードバップというムーブメントを生み出し、黄金のクインテットによるプレスティッジでのマラソンセッションで一つの頂点を極めたマイルス・デイビス(Miles Davis, tp)。
しかし、そこに安住することなく、マイルスはすぐに次なるピークを目指して歩みだします。 ジョージ・ラッセルにより発案はされたものの、未成熟な状態のまま放置されていた「モード・ジャズ」の完成がそれです。 そして、このモードを表現するためのピアニストを探していたマイルスの目にとまったのが、ビル・エヴァンス(Bill Evans)でした。 エヴァンスの協力を得たマイルスは、'59年3月に『カインド・オブ・ブルー(Kind Of Blue)』を発表し、「モード・ジャズ」の完成形を世に示したのです。 この後、エヴァンスは他のメンバーとの性格の相違や麻薬問題などのためマイルスの元を離れますが、モード・ジャズの創造というエキサイティングな経験はエヴァンス自身にとって大きな糧となり、それはすぐに作品という形で現れることになります。 それが、『カインド・オブ・ブルー』と同じ年の12月、ビル・エヴァンスをリーダーとするピアノ・トリオによって吹き込まれた『ポートレイト・イン・ジャズ(Portrait in Jazz)』です。 『ポートレイト・イン・ジャズ』において、エヴァンスは自ら創造に携わったモードの手法をおなじみのスタンダード・ナンバーに応用することでそれぞれの曲に新しい光を当て、それまで知られていなかった各曲の魅力を聴衆の前に現出してみせたのです。 もう一つ、このトリオが斬新だった点は、それまでのピアノ・トリオにおいて基本とされていた「ピアノ+リズムセクション」という構成を打ち破り、ピアノ・ベース・ドラムスという3つの楽器が、それぞれの音色を活かしながら対等の立場でジャズを演奏する「インタープレイ」というスタイルを確立したこと。 トリオのメンバーは、エヴァンス(p)の他、スコット・ラファロ(Scott Lafalo, b)とポール・モティアン(Paul Motian, ds)。 上のマイルス・デイビス・クインテットをはじめ、ジャズの歴史においては「黄金の」と形容されるグループがいくつか現れましたが、このエヴァンスの「黄金のトリオ」はその最たるものといってよいでしょう。 特に、エヴァンスと天才ベーシスト・ラファロとの邂逅は奇跡的な出来事であり、これほど音楽的にお互いを理解し、刺激し合えるパートナーに巡り合ったことは、彼らの音楽を聴くことができる「我々」にとって、この上ない幸運といえます。 エヴァンスの「黄金のトリオ」は、『ポートレイト・イン・ジャズ』の後、'61年までの1年半ほどの間に『エクスプロレイションズ(Explorations)』『ワルツ・フォー・デビー(Waltz for Debby)』『サンデー・アット・ザ・ヴィレッジ・バンガード(Sunday At The Village Vangard)』といういずれも名作を残します。 しかし、最後の2枚が収録されたヴィレッジ・バンガードでのライブの11日後、7月6日にラファロが交通事故でその短い生涯を終え、「黄金のトリオ」の活動も幕を下ろすことになったのです。 強く輝く星ほど短命である…こんな言葉が頭に浮かぶエピソードの一つではないでしょうか。 ラファロの死は、よき理解者を失ったエヴァンスに大きなダメージを与え、その後しばらく、いや、エヴァンスの全生涯にわたって傷が完全に癒えることはなかったように思います。 先に「我々にとって幸運」としたのはこのためです。 さて、アルバムの内容についても書きたいことはたくさんあるのですが、そのスペースはすでに尽きてしまったようです。 それに、今さらくどくどと説明する必要もないでしょう。 最後に収録曲だけご紹介しておきますので、ぜひ実際に聴いてみてください。 とてもジャズのアーティストとは思えないエヴァンスの「ポートレイト」をあしらったジャケットですが、アルバムの中には決して汲み尽くせないジャズの魅力が詰まっています。 01. 降っても晴れても (Come Rain or Come Shine) 02. 枯葉[Take 1] (Autumn Leaves [Take 1]) 03. 枯葉[Take 2] (Autumn Leaves [Take 2]) 04. ウィッチクラフト (Witchcraft) 05. ホエン・アイ・フォール・イン・ラヴ (When I Fall in Love) 06. ペリズ・スコープ (Peri's Scope) 07. 恋とは何でしょう (What Is This Thing Called Love?) 08. スプリング・イズ・ヒア (Spring Is Here) 09. いつか王子様が (Someday My Prince Will Come) 10. ブルー・イン・グリーン[Take 3] (Blue in Green [Take 3]) 11. ブルー・イン・グリーン[Take 2] (Blue in Green [Take 2]) ビル・エヴァンス・トリオ 『ポートレイト・イン・ジャズ』
今回は、先月からはじめた新シリーズ「今月の1枚」の第2回。
ご紹介するのは、ジュリアン・"キャノンボール"・アダレイ(Julian "Cannonball" Adderley, as)の『サムシン・エルス(Somethin' Else)』です。 このアルバムは、「ジャズの名盤」が語られるときには必ず名前のでる作品であり、ブルーノート・レーベルの数ある作品の中でも傑出した一枚と言ってよいでしょう。 パーソネルはキャノンボールのほか、マイルス・デイビス(Miles Davis, tp)、ハンク・ジョーンズ(Hank Jones, p)、サム・ジョーンズ(Sam Jones, b)、アート・ブレイキー(Art Blakey, ds)という錚々たるクインテット。 マイルスがリーダーとしてではない形でクレジットされている珍しい作品なのですが、これはあくまでも契約上の関係からのことで、実質的にはマイルスが音頭をとり、弟分のキャノンボールに華をもたせるために吹き込んだ作品とされています。 実際、クレジットを目にすることなくアルバムを聴いてみれば、誰でもマイルスのリーダー作だと思うに違いありません。 マイルスが抑制されたトランペットでしっかりとした下絵を描き、その上にキャノンボールが華やかなアルトサックスで彩色する…収録された各曲からはそんな印象を受けます。 そのバランスは絶妙で、これがもし早吹きのトランペットだったとしたら、ガシャガシャとうるさい駄作に終わってしまったことでしょう。 それから、圧倒的な存在感を示すホーンの二人に隠れてしまいがちですが、リズムセクションも忘れてはなりません。 ハンクとサムのコンビには、例えばR.ガーランドとP.チェンバースのような「都会のダンス」といったお洒落な魅力はありませんが、「田舎の踊り」がもつ素朴な趣にあふれており、骨太で力強い演奏により、前面の二人を強力にサポートしています。 また、ブレイキーは「ハード・ヒッター」の代名詞的ドラマーですが、このアルバムでは他のメンバーとの兼ね合いを考慮してのことでしょう、ブラシを効果的に使ったプレイを披露しており、彼の別の一面を知ることができます。 収録されているのは次の6曲。 01. 枯葉(Autumn Leaves)[Joseph Kosma, Johnny Mercer, Jacques Prevert] 02. ラブ・フォー・セール(Love For Sale)[Cole Porter] 03. サムシン・エルス(Somthin' Else)[Miles Davis] 04. ワン・フォー・ダディ・オー(One For Daddy-O)[Nat Adderley, Sam Jones] 05. ダンシング・イン・ザ・ダーク(Dancing in The Dark)[Howard Dietz, Arthur Schwartz] 06. アリソンズ・アンクル(Alison's Uncle)[Hank Jones] このセレクションはキャノンボールが行ったとされていますが、非常にバランスのとれた名選です。 トップにおかれた「枯葉」はあまりにも有名で、実際、ここでのマイルスのミュートプレイがアルバム全体の基本的な色調を規定しているように思います。 1958年3月9日という録音日にかかわらず「秋」の雰囲気に満ちているのはそのためではないでしょうか。 もちろん、他の曲もそれぞれ固有の「聴き所」をもっており、収録時間はあっという間に過ぎ去ります。 なお、5曲目の「ダンシング・イン・ザ・ダーク」は、アルバム中唯一マイルスが参加せず、カルテットで奏されていますが、やはりこれだけは他とは違って非常にリラックスした演奏となっており、このことからもマイルスの影響力がいかに大きいかがみてとれます。 6曲目の「アリソンズ・アンクル」はオリジナル盤には含まれておらず、後にボーナストラックとして追加されたもの。 この手の措置はアルバム全体の構成を崩すことが多いのですが、ここでは全体を通しで聴いてみてもまったく違和感を感じないほど溶け込んでいるように思います。 それにしても、こんなすばらしい音楽が千円札一枚で聴けるなんて、いい時代になったものですね。 キャノンボール・アダレイ 『サムシン・エルス(Somethin' Else)』
前回は「魅惑のジャケット −風景−」として3枚のアルバムをご紹介しましたが、このテーマを取り上げようと思い立つきっかけとなった作品があります。
それは、レッド・ガーランド(Red Garland, p)の『オール・モーニン・ロング(All Mornin' Long)」。 ではなぜ、これを前回紹介しなかったのか? 実は、このアルバムはプレスティッジ・レーベルのいわゆる「企画もの」で、同レーベルが擁する人気アーティストを集めて制作された3枚のうちの1枚なのですが、すべてジャケットは風景をモチーフとしており、かつ非常に秀逸なデザインとなっています。 つまり、どれも捨てがたく、そうかといって3枚すべてを挙げるのでは範囲が狭くなりすぎる…といったジレンマが生じ、「それなら」ということで、このシリーズは「魅惑のジャケット」からははずし、別テーマを設けてまとめてご紹介することにしたのです。 名付けて、「企画・シリーズもの」。 その第1回目として、本日は上のプレスティッジの作品をご紹介したいと思います。 ジャズ3大レーベルの一つであるプレスティッジは、「オールスターもの」やS.ロリンズとJ.コルトレーンを競演させた『テナー・マッドネス(Tenor Madness)』といった「バトルもの」を数多く出していますが、『オール・モーニン・ロング』は『オール・デイ・ロング(All Day Long)』、『オール・ナイト・ロング(All Night Long)』とともにオールスター・シリーズの一つを構成しています。 録音は"ナイト"が'56年、他の2枚が翌'57年です。 共通した特徴として、参加アーティストの手になる作品、および非常に演奏時間の長い曲が収められていることが挙げられます。 これはすなわち、オールスターズ各メンバーの「聴かせどころ」が十分に用意されているということであり、プロデューサーのボブ・ワインストックの粋な計らいといったところでしょう。 では、それぞれのアルバムについて見てみましょう。 『オール・モーニン・ロング』は、「レッド・ガーランド・クインテト」とクレジットされることが多い作品で、内容的にもガーランドが中心的役割を担っています。 パーソネルはガーランドの他、J.コルトレーン(ts)、D.バード(tp)、G.ジョイナー(b)、A.テイラー(ds)。 ベースがトリオでおなじみのP.チェンバースでないのは、当時ガーランドはこのメンバーでクラブ演奏を行っていたためだそうです。 気心の知れたメンバーによるセッションだけあって全体的にリラックスした雰囲気に満ちている一方、それぞれのパートにおける自己主張がせめぎ合う緊張感、これらがうまくバランスされた作品ということができます。 続いて『オール・デイ・ロング』。 こちらはケニー・バレル(g)を中心としたセッションで、盟友T.フラナガン(p)に加え、D.バード(tp)、F.フォスター(ts)、D.ワトキンス(b)、A.テイラー(ds)によるプレイが収録されています。 このアルバムのキーワードは「デトロイト」。 フォスターとテイラーを除く4人はいずれもデトロイト出身であり、この土地の風土音ともいえる渋みのある演奏の魅力はここでも遺憾なく発揮されています。 残りの1枚、『オール・ナイト・ロング』もバレル、もしくはバード&バレルの作品として紹介されることが多いアルバムです。 メンバーはバレル・バードの他にH.モブレー(ts)、J.リチャードソン(fl)、M.ウォルドロン(p)、D.ワトキンス(b)、A.テイラー(ds)というこちらもクインテット編成。 トランペット・テナーサックス・フルートという、それぞれ異なる個性をもった楽器の魅力を違和感なく聴くことができるのは、ワトキンスのベース・テイラーのドラムスというしっかりした土台、およびクールなトーンでホーンセクションをサポートするウォルドロンのピアノあってのものといえるのではないでしょうか。 |
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年齢:不惑といわれる歳になってしまいました(;_;) ジャズ以外の趣味はクラシック、映画、旅行、スキーなど。 「普通」の人たちにジャズの魅力をお伝えしたいと思っています。 by 銀猫 Entry
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・今月の1枚(3) −ビル・エヴァンス『ポートレイト・イン・ジャズ(Portrait in Jazz)』− ・ジャズ・スタンダードナンバー(16) −オール・オブ・ミー(All of Me)− ・ジャズ・スタンダードナンバー(15) −イット・クッド・ハプン・トゥ・ユー(It Could Happen to You)− ・魅惑のジャケット(7) −街− Fortune
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