ジャズ初めの一歩
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魅惑のジャケット(7) −街−
10月も半ばを過ぎ、山が眠りにつく前のひと時、その一張羅を着て装う季節となりました。

都会でももう少しすると枯葉が踊るようになり、山々のような艶やかさはないものの、これもまた一種独特の風情が感られるように思います。

このような季節にちなみ、今回は「街」をモチーフにしたジャケットをもつジャズのアルバムをご紹介しましょう。

一枚目は、マイルス・デイビス(Miles Davis, tp)の『ウォーキン(Walikin')』。

マイルス・デイビス『ウォーキン』マイルス・デイビス 『ウォーキン(Walikin')』

1950年代の初頭、パリを訪れたマイルスは、フランスの代表的シャンソン歌手ジュリエット・グレコと出会い恋に落ちますが、それが元で麻薬に溺れるようになり、音楽的にも停滞した数年間を過ごします。

しかし、'53年、父親の農園にあったゲスト・ハウスに1週間篭って麻薬を克服した彼は、その後数々のセッションを重ねることにより徐々にスランプからも脱却していきました

'54年に録音されたこの『ウォーキン(Walikin')』は、そんなマイルスの転回点となった一枚であり、ジャズの歴史においてもビ・バップからハード・バップへと時代が変わった記念碑的作品として知られています。

オリジナル・クインテットを結成し、有名なプレスティッジでのマラソン・セッションをはじめとする、ほかに例を見ないほどの多様多彩な作品により、単にジャズの世界にとどまらず、現代アートシーンに大きな影響を及ぼす存在へと飛翔する前夜のマイルスの姿を知るため、ぜひ聴いておきたいアルバムです。

二枚目は、レッド・ガーランド(Red Garland, p)の『グルーヴィ(Groovy)』。

レッド・ガーランド『グルーヴィ』レッド・ガーランド 『グルーヴィ(Groovy)』

P.チェンバース(b)、A.テイラー(ds)と組んだトリオとして、先にご紹介した『ア・ガーランド・オブ・レッド』に続いてリリースされたのがこの『グルーヴィ(Groovy)』で、数あるガーランド・トリオの中でも最も人気のある作品といってよいでしょう。

ガーランドのトレード・マークともいえる「ブロックコード+シングルトーン」による演奏は、シンプルでありながらジャズの魅力が凝縮されたものであり、このアルバムによってジャズに開眼させられたという人も多いはずです。

その「わかりやすさ」のため、もったいぶったマニアやジャーナリストからは「低俗」とのレッテルを貼られることも少なくないガーランドですが、そんな世評は一切無視してかまいません。

レーベル・タイトル・アーティスト名を「建物の壁への落書き」としてあしらったジャケット・デザインは、音楽的内容と相まってまさに"Groovy"そのもの。

右側のレンガに縦書きされた"Go Red Go"の文字もなかなかいい味を出しています。

さて、本日の最後、三枚目のアルバムは、ソニー・クラーク(Sonny Clark, p)の『クール・ストラッティン(Cool Struttin')』。

ソニー・クラーク『クール・ストラッティン』ソニー・クラーク 『クール・ストラッティン(Cool Struttin')』

「アルバムジャケット」「モダン・ジャズ」という言葉を聞いてこの作品が反射的に頭に思い浮ぶという人が少なくないほど有名な作品です。

タイトルに使われている"Strut"という単語は「気取って歩く・気取った歩き方」といった意味なので、"Cool Struttin'"とは「イカした気取り歩き」ということになります。

アスファルトの上を颯爽と歩くスリットスカートの女性…しかもその「脚」の部分だけを写したところにこのカヴァーデザインの妙があるのではないでしょうか?

さて、内容(音楽)についても少しご紹介しておくと、本作は、'57年に西海岸からニューヨークに移り、A.ライオンに見出されてブルーノートと契約したクラークが、『ダイヤル・S・フォー・ソニー』『ソニー・クラーク・トリオ』に続いて録音した3作目にあたります。

当時リーダーのクラークは26歳、メンバーの中で最も若いP.チェンバースは22歳、最年長のP.J.ジョーンズ(ds)でも32歳という、非常に若い面子による演奏ですが、溌剌とした輝きをもちながら非常に高いレベルの完成度が示されています。

もっとも、クラーク自身は4歳でピアノを始め、6歳の時にラジオ出演をし、31歳でこの世を去ってしまった早熟型のアーティストなので、彼にとっては円熟期のプレイといえるのかもしれません。
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