ジャズ初めの一歩
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今月の1枚 −レッド・ガーランド 『ア・ガーランド・オブ・レッド(A Garland of Red)』−
これまで、おもにジャズを概論的に見てきましたが、そろそろ一人のアーティストや一枚のアルバムについて、少し詳しく取り上げてみようかと思います。

そこで、新たに「今月の1枚」というテーマを設け、ジャズの名盤を毎月一枚づつ、できるだけその時期に聴くのにおすすめのものをご紹介していくことにしました。

今回はその一回目、ご紹介するのはレッド・ガーランド(Red Garland, p)の『ア・ガーランド・オブ・レッド(A Garland of Red)』です。

1956年8月17日、ハッケンサックで録音されたこのアルバムは、ガーランド初のリーダー作であり、またポール・チェンバース(Paul Chambers, b)、アート・テイラー(Art Taylor, ds)とトリオを組んで初めて録音したという点でも記念すべきアルバムです。

この時期、ガーランドはマイルス・デイビス・クインテットにおけるリズム・セクションの中核として、有名なマラソン・セッション4部作の制作に参加しており、その合間に録音されたことになります。

4部作の1枚『ワーキン(Workin')』の録音中、休憩時間にマイルスが席を外した際、リズムセクションの三人、ガーランド、チェンバース、それにドラムスのフィリー・ジョー・ジョーンズが息抜き(?)に「Ahmad's Blues」という曲を演奏しましたが、この出来が非常によかったため、『ワーキン』にそのまま収録されました。

スーパーバイザーとしてアルバム制作に参加していたプレスティッジ・レーベルの創始者ボブ・ワインストックは、この演奏を耳にしてガーランドのトリオ演奏の魅力に気付き、『ア・ガーランド・オブ・レッド』を皮切りに、『レッド・ガーランズ・ピアノ(Red Garland's Piano)』『グルーヴィ(Groovy)』『イッツ・ア・ブルー・ワールド(It's a Blue World)』『キャント・シー・フォー・ルッキン(Can't See for Lookin')』などが生み出されていくことになったのです。

ただ、きっかけとなったP.J.ジョーンズをドラムスに据えてのトリオ演奏はその後ほとんどありません。

確かに、ガーランドのトリオではジョーンズのドラムスは少し重すぎるので、この選択は妥当ではないかと思います。

『ア・ガーランド・オブ・レッド』の収録曲は全8曲、スタンダードナンバーを中心に、アップテンポの曲とバラード・ブルースを交互に配置して飽きのこない構成になっており、全体的に明るく乾いたトーンで統一された演奏は、モノトーンにピンクをうまくあしらったジャケットとともに、秋の爽やかな日に聴くのに相応しい印象を与えます。

ちなみに、ガーランド(garland)とは名誉や勝利の印である「花飾り」のことで、この意味と名前とをうまくかけたタイトルも洒落ています。

そういえば、ガーランドの作品タイトルは、上にも一例を挙げたように、その演奏と同様とても口当たりのよいものが多いですね。

最後に、収録曲を思いつくままの感想とともにご紹介しておきましょう。

01. ア・フォギー・デイ(A Foggy Day) [George Gershwin]

オープニングに相応しい、明るく軽快な曲。
霧とはいっても、暗い曇りの日にかかる陰鬱なものではなく、晴れた朝に時折見られるような、一瞬で消え去るさわやかな霧をイメージさせます。

02. マイ・ロマンス(My Romance) [Rodgers-Hart]

ピアノ・トリオに限っても、ビル・エヴァンスやキース・ジャレットなど多くの名演がある曲ですが、ここでガーランドは甘さを抑えたさわやかなマイ・ロマンスを聴かせてくれています。

03. 恋とは何でしょう(What Is This Thing Called Love) [Cole Porter]

時として鋭い印象を受ける曲ですが、ここではとげとげしさを抑えたすっきりとしたパフォーマンスに仕上がっています。
また、ベースとドラムスにもアピールの機会が与えられており、チェンバースのアルコ奏法(弦を弓で弾く奏法)、テイラーのストックワークも聴きものです

04. メイキン・ウーピー(Makin' Whoopee) [Kahn-Donaldson]

明るい気だるさが独特の魅力を醸しだしている名演。
個人的には、はじめのうちはそれほど好きではなかったのに、ある時期からなぜか突然虜になってしまった曲です。

05. 九月の雨(September in The Rain) [Dubin-Warren]

冒頭のア・フォギー・デイと対をなしてアルバムの顔となっている曲。
ガーランドが短く1コーラス弾いたあと、すぐにベースのチェンバースに主役を譲るというめずらしい構成をとっています。

06. リトル・ガール・ブルー(Little Girl Blue) [Rodgers-Hart]

少し湿度のある、しっとりとした風情を聴かせるメロウなバラード。

07. コンステレイション(Constellation) [Charlie Parker]

これまでのメロディーラインを重視した曲から一転、アバンギャルドな一曲。
チャーリー・パーカーへの敬意をビ・バップ奏法で表現したプレイといえるでしょう。

08. ブルー・レッド(Blue Red) [Red Garland]

アルバム中唯一のガーランドのオリジナル曲。
前の「コンステレイション」とともに、「明るく乾いた」アルバム全体のトーンとは少し異質な、ちょっとダークで粘り気のあるブルース。

アルバム制作者の意図は、最後の二曲を加えることでスパイスを効かせようとしたのだと思いますが、個人的には、通しで聴くとアルバムの統一感が崩れ、どうしても少しちぐはぐな感じがしてしまいます。

そのため、私は始めの6曲と最後の2曲をいつも分けて聴いています。

レッド・ガーランド『ア・ガーランド・オブ・レッド』レッド・ガーランド『ア・ガーランド・オブ・レッド』